現場からリアルタイムに得られるデータだけでなく、人の動き、専門家の知見、そして人々が相互に影響しあうことによる相乗効果など、これまで埋もれていた潜在的なニーズやコト(付加価値)を発見することで、新たなイノベーションが生まれ始めています。そのキーとなるのが「IoT」(※1)です。今までつながることのなかったモノやヒトがインターネットを介してつながるIoTにより、ビジネスや社会にどのような変革をもたらすのか、その変革を日立がどのように支援していくのかを、日立のキーマンへのインタビューを中心にご紹介します。

※1 Internet of Things

無限の可能性を秘めたIoTのポテンシャル

モノとモノ、さらにヒトまでもがつながるIoTの進展で、さまざまな業界でパラダイムシフトが起きつつあります。世の中のモノやヒトの動きがデータ化され、インターネット経由でさまざまなシステムと有機的につながり関係性をもつ相乗効果は、既存のビジネスモデルをしのぎ、事業領域の壁を打ち破るほどのインパクトを与えると考えられています。それは19世紀における産業革命、20世紀のインターネット革命に匹敵するほど大きな社会イノベーションとなるかもしれません。

さまざまなモノがネットワークでつながる発想自体は突然生まれたわけではなく、「日本はその先進国の一つだった」と、日立製作所 スマート情報システム統括本部 事業主管の渡邉 友範は語ります。

「まだIoTという概念がなかった2000年代前半から、ICタグやセンサーで機器情報を集めるといったユビキタスネットワークの取り組みを日本は国を挙げて進めていました。製造業では産業機器にセンサーを組み込み、遠隔監視するM2M(※2)の原型もすでにあったのです。しかし当時はモノから得られた情報を使って“機能性を高める”ことに主眼が置かれていました。それに対し、IoTでは、より詳細でリアルな現場情報、人の動き、SNS(※3)で発信される人々の意見や感想なども含めた多様なデータで“ビジネスを変革する”“新たなサービスを生み出す”ことへとその目的が大きく変わっています。

さらに言えば、人々がSNSなどでさまざまな情報を共有し、意見交換できるようになったため、企業発信の広告やマーケティングだけではトレンドを生み出すことが難しくなってきました。つまり企業側がリアルなニーズを把握するため、積極的に情報収集し、それに合わせた商品やサービスを戦略的に展開していかないと競争に勝てない時代となっています。そこで重要な役割を果たすのがIoTやビッグデータ解析、人工知能(AI/※4)といった先進技術なのです」(渡邉)

※2 Machine to Machine
※3 Social Networking Service
※4 Artificial Intelligence

画像: 株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部 事業主管 渡邉 友範

株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部
事業主管 渡邉 友範

求められているのは「付加価値」

日立製作所 スマート情報システム統括本部 事業主管の尾山 壮一は、「世の中がモノづくりからコトづくりへと変化してきたこともIoTへの期待を高めている背景の一つ」だと指摘します。

「今まで製造業の企業にとって、製品はエンドユーザーに買っていただいたらそれでおしまい。その製品の使われ方、機能に対する満足度などについてはわからないのが常でした。ところがネットやSNSでの評価に加え、IoTによって製品自体からも詳細な情報が取得できる、言いかえれば企業とエンドユーザーが双方向にコミュニケーションできる環境が整ってきました。

これにより、他社より多くの情報を集め、いち早く分析して反映すれば、エンドユーザーに選ばれる価値のある製品やサービスなどを先行して創造することが可能となるのです。それは製品販売にとどまらず、製品を使ってサービスを提供する、『モノのサービス化』の進展にも貢献します。その実現を支える基盤としてIoTが認知されるようになってきたのです」(尾山)

米国の「インダストリアル・インターネット」、ドイツの「インダストリー4.0」に代表されるように、IoTのビジネス活用は民間企業のコンソーシアムを中心に産官学が一体となった大きな潮流として、すでに世界中で認知され始めています。またその領域は製造業だけでなく、エネルギー、ヘルスケア、流通、公共、社会インフラといった幅広い分野に広がっているのです。いまや、グローバル市場で自社の競争力を確保し、熾烈な競争を勝ち抜いていくうえでIoTの活用は不可欠な状況となりつつあります。

「IoT活用では海外が一歩先に進んでいると思われがちですが、先ほどもお話ししたように、日本はユビキタスの時代からM2MやIoTの基礎研究に取り組み、ユースケースもいろいろと考えられてきました。あとは日本企業がいかにその先行メリットを獲得できるか、事業変革につなげていけるかにかかっています。まずは始めてみることが重要なのです」(渡邉)

IoTのカギとなるITとOTの高度な融合

総務省発行の「平成27年版情報通信白書」によれば、インターネットにつながるモノの数は2013年時点で約158億個、2020年までに約530億個にまで増大すると予測されています。これはそのまま、IoTによる新たなビジネスチャンスの可能性が急速に拡大することを意味します。つまり、IoTの波に乗り遅れるのは企業にとって大きな損失となる可能性が示唆されているのです。

現場のきめ細かな情報をイノベーションにつなげるには、デバイスからの情報を迅速に収集・分析し、業務での利用状況まで理解したうえで、得られた気づきや課題への対応を具体的な意思決定などにフィードバックしていく仕組みが必要です。そこで最も重要なのは、さまざまな事業領域に即したITとOT(制御技術)の融合です。

日立はエネルギー、社会インフラ、ヘルスケア、物流などの各領域でグローバルに事業を展開し、それらの事業に精通した専門家を擁しています。その知見とリアルな業務で培ったOTのノウハウがあるからこそ、お客さまの業務課題をともに深く考えることができるのです。「ITを活用した課題解決への道筋と、これからのビジネスのグランドデザインまでを、トータルに語り実践することができるのは日立ならではだと自負しています」(尾山)

ITとOTを融合させて提供できる日立は、データ収集には欠かせないセンサーノード、高効率・高信頼のM2Mネットワーク、高速データアクセス基盤や人工知能、データ統合・分析基盤であるPentahoソフトウェアをはじめとしたビッグデータ解析技術や利活用のノウハウを有しています。そのうえ、それらの分析結果から人知による新サービスの創造や業務改善へのフィードバック、パートナー企業との連携によるエコシステムの構築も含めてワンストップに展開しています。

画像: 株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部 事業主管 尾山 壮一

株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部
事業主管 尾山 壮一

社会イノベーションでフロント人財と組織を強化

「日立は6年ほど前から、長年培ってきたインフラ技術に高度なITを組み合わせて社会の複雑な課題を解決していく社会イノベーション事業を展開してきました。多様化した社会には、一つの専門領域に閉じた技術やナレッジでは解決できない多くの課題があります。そのため日立の研究者やエンジニアが、お客さまのフロントに飛び込んで一緒に課題を考え、他の領域の専門家も巻き込みながら解決するマーケットインの発想で、人財や組織の活性化と強化を図ってきました」(尾山)

2015年4月に行われたR&D(※5)体制の再編に続き、2016年4月からはフロント機能を強化し、サービスとプロダクトを主体とした事業群で構成されるマーケット別の事業体制に変革します。お客さまのそばで価値あるイノベーションを提供していきます。

「当然ですが、日立だけですべてを担うという方法では世の中のスピードに追随できません。そこで最適なソリューションを作り出すため、その道を究めた企業や優れた知見を持つ企業との“協創”にも積極的に取り組んでいます。例えば近年では、マーケティング領域における博報堂とのビッグデータ利活用での協創などがあります。それらの力が、これまでにないビジネスモデルや未知なる課題の解決が主流となるIoTソリューションにも存分に生かされているのです」(渡邉)

※5 Research and Development

故障予兆や改善ポイントをリアルに検知

IoT関連の適用事例として、すでに稼働を始めた東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)と日立が共同開発した「インフラ設備の予防保全システム」が挙げられます。これはJR東日本管内の「き電線(電車への電力供給線)」の状態把握を行うため、太陽光発電型センサー、モバイル型ゲートウェイにより、屋外に設置された広範なセンサー情報を、車両で巡回しながら効率的に収集、クラウド上で分析し、故障や交換時期などを予測できるシステムです。保守員の手間と負担が軽減され、設備の状態把握に大きく貢献しました。今後日立は、さまざまな社会インフラ設備の管理・保全や故障予測にも役立てていく予定です。

鉄道分野では、日立が英国をはじめ、海外で展開する高速鉄道車両の保守・改善にもIoTとAIを適用することが検討されています。高速走行する車両の部品状態を多数のセンサーでリモート監視。メンテナンス時期の適正化による故障の未然防止や、より故障しにくい部品の開発をAIによる解析によって行うなど車両製造にまで反映し、保守コストの削減を図っていくという計画です。

このほかにも、「日立建機が十数年以上も前から展開しているIoTによる建設機械の管理・保全サービス、医療機器開発を行う日立メディコの超電導MRI(※6)装置向け故障予兆診断サービスなどを実現しています。どちらもグローバルで高い成果を上げており、そこで得られたノウハウや検証済みのクラウドサービスを、さまざまなお客さまに展開することが可能となっています」(渡邉)

※6 Magnetic Resonance Imaging

人の動きをデジタル化する技術で先行

世の中のさまざまな事象をデータとしてとらえ、可視化するために、日立は早くから「ヒト」の動きのデジタル化にも取り組んできました。日立のIoTデバイスの一つである名札型センサー(人が装着)と小型ビーコン(場所に設置)を組み合わせ、いつどこで誰と誰が対面したか、どう動いたかといった人間行動のビッグデータの収集・解析がその一例です。

あるホームセンターで行われた実証実験では、お客さまの買い回り動線と棚の位置、スタッフの立ち位置などの影響連鎖を分析評価した結果、店内の高感度スポットにスタッフを配置するだけで顧客単価が15%もアップすることが分かりました。

「これはIoTと、日立が開発した人工知能技術Hitachi AI Technology/Hを活用した事例となります。実は人の動きをカメラでとらえ分析するソリューションはそれほど珍しくはありません。ですが、人の挙動や心の動きもデータとしてとらえ、組織のKPI(※7)との相関性が強い要素と、その改善施策の仮説を効率的に導き出す事例を展開しているのは、まだ日立ぐらいかもしれませんね」(渡邉)

いま世の中では、SNSやIoTなどから集められた情報を、ビッグデータとしてAIなども活用した高度なアナリティクスで、新しいビジネスモデルやビジネスプロセスの変革につなげていく「デジタルトランスフォーメーション」が展開されようとしています。その中で新たな価値を創出し、競争優位性を確立していくには、先進的なAI技術やクラウドに加え、お客さま個別の業務課題とデータの相関性を読み解く分析ノウハウと知見、さらには業界・業種を越えた企業連携が重要な役割を果たします。

ここでも日立は、社会イノベーション事業で培った総合力と実業連携も含めた豊富な実績とノウハウで、お客さまの価値創出を強力にサポートしていきます。

※7 Key Performance Indicator

画像: 日立の考えるIoTの全体像

日立の考えるIoTの全体像

「共生自律分散プラットフォーム」への展望

IoTの進展に合わせ、忘れてはならないのがセキュリティの強化です。

「IoTにより、今後、ビジネスや生活のさまざまなシーンで生じたデータが収集されていくことになります。そこには、お客さまのビジネスやエンドユーザーのプライバシーに関するクリティカルな内容も含まれている可能性が高くなります。そして、IoTにより外部とつながった制御装置やクルマなどに対し、悪意を持った遠隔操作や故意による誤動作を防ぐ物理的な防御も必要です。2016年1月、日立はIoTに関する情報セキュリティの専門組織を立ち上げました。日立グループ内はもちろん、国内外のセキュリティーベンダーとのアライアンスも一段と強化し、サイバーセキュリティと物理セキュリティの両面から、お客さまビジネスの安全・安心をより一層支援していきます」(尾山)

近い将来、IoTとビッグデータ、AI活用が本格化し、市場環境の変化に即応したビジネス改善や革新が身近になるでしょう。そこでは、それぞれの企業システムや社会インフラが自律的な最適化を進めるだけでなく、相互に連携しながら新たな課題解決を図っていく共通のプラットフォームが必要となります。その姿を日立は「共生自律分散プラットフォーム」と位置づけています。

「共生自律分散によって実現しようとしているのは、IoTによる価値創出の最大化です。資源やエネルギーの効率的な活用、ビジネスの革新、リスク管理やセキュリティ強化などといった、現代が抱える重要な課題に対して社会全体で最適化を図るというコンセプトです。今後はこのコンセプトをパートナーやお客さまとともに事業の中で積極的に推進し、よりよい社会の実現をめざしていきたいと考えています」(渡邉)

今後も日立は、IoTによりそれぞれの企業が持つ「底力」を呼び覚まし、世界の新たな潮流となるべく、未来の可能性を切り開くための支援を行っていきます。


お問い合わせ先
(株)日立製作所 スマート情報システム統括本部
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/it/smart/general/form.jsp

情報提供サイト
http://www.hitachi.co.jp/smart-it/ht586/


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