ビッグデータ利活用の本格化にともない、医療・健康といった「ヘルスケア分野」への適用に大きな期待が高まっています。医療費の膨張、高齢化社会の進展、医療従事者の不足などの課題を解決し、医療の質の向上に役立てるには、センシティブかつ膨大なデータをどのように利活用していけばよいのでしょうか。
今回の特集では、実業の視点から医療データの高度利活用に向けた活動を展開している、株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院(茨城県ひたちなか市) 院長 永井 庸次とスマート情報システム統括本部 ヘルスケア本部 本部長 藤岡 宏一郎の対談、そして最先端クラスのヘルスケアソリューションをご紹介します。

藤岡 日本の医療機関に電子カルテが導入されてから、15年が経(た)とうとしています。以来、データの電子化は進んだものの、その有効活用がなかなか加速していないのではないかという印象もあります。
 社会保障や税に関するマイナンバー制度の施行を前に、ヘルスケア分野では、以前から蓄積されてきた多種多様な医療データと、これから検討が始まる医療分野のマイナンバー制度も含めて、センシティブかつ膨大な情報をいかに安全に活用するべきかの議論が始まっています。
 医療データの価値を引き出すための活動を早くから展開してこられた永井先生は、こうした現状をどのようにとらえていらっしゃいますか。

永井 確かに病院にはデータが山ほど存在しています。まさに“ビッグデータ”といっていいでしょう。しかし、実際には院内の部門システムに情報が散在し、断片化しているため、それぞれがひもづいた“意味あるデータ”にはなっていません。理由としては、多くの病院組織が縦割り社会であること、情報を二次活用する文化があまりなかったことなどが挙げられます。ただし日本ではDPC(包括医療費支払制度方式)の導入を契機に、診療プロセスの詳細な分析に役立つデータセットが蓄積されてきました。そこで当院では電子カルテを中心に、それらを意味あるデータとして収集・変換・活用しようと、2013年に院内組織としてデータセンターを設置し、診療や臨床研究、病院経営に有用な情報の二次活用を促進するためのデータウェアハウス(DWH)を構築しました。

藤岡 非常に先進的な取り組みですね。病院経営やヘルスケア全体のイノベーションには、データ統合と共有が欠かせない要素になると思います。現在は日本でも、院内だけでなく地域医療機関の間でもデータ連携が始まりつつあります。その基盤となるのがデータセンターやDWHですね。

永井 当院で構築したのは、テキストも含めた電子カルテ、オーダーエントリーシステム、臨床検査システムなどの各部門システムからデータを取り込み、必要に応じて迅速に検索・閲覧・解析できる仕組みです。ただし、紙やPDFで運用している一部システムのデータがまだ一元化できていないという悩みがあります。

藤岡 そうしたデータの構造化やハンドリングについてのお悩みは、多くのお客さまから寄せられています。データ仕様が開示されていないシステムはデータの二次利用が困難ですし、紙ベースの運用が混在していると、最初からデータの統合・共有を諦めてしまうケースも少なくありません。そうした課題を解決するため、日立は多種多様な情報を一元的に収集・利活用できるソリューションを開発しています。クラウド環境にも対応しているため、地域医療連携の促進やBCP(※1)対策にも役立つと考えています。

※1 Business Continuity Plan

画像: 株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部 ヘルスケア本部 本部長 藤岡 宏一郎

株式会社日立製作所 スマート情報システム統括本部 ヘルスケア本部 本部長 藤岡 宏一郎

「何をめざして」データ統合を図るかが重要

永井 情報の一元化と分析で、どのような価値が生み出せるかに言及すれば、まずは「医師が喜ぶデータ」が出てくることなんですね。例えば、薬剤の効果や副作用などがビッグデータによって効率的に検証され、より安全で有効な処方が可能になってきます。人工知能を活用すれば、膨大な健診・医療データの解析で、今まで思いつかなかったような効率性の高い治療方法が見つかるかもしれません。至近な話では、一律ではない医療機関ごとの実績を明確にするための基盤にもなります。その一環として当院では医療の質を可視化して継続的な改善活動に生かすため、診療科別、病棟別に入院患者の後期高齢者率、がん患者率、転倒・転落発生率などを「病院KPI」(※2)としてホームページ上で公開しています。

藤岡 医療安全対策などにも有効なデータになりそうですね。

永井 例えば、外科手術などで合併症が増えていることがわかったとします。その場合、どの医師が担当した手術でその傾向が強いのかが明らかになれば早期に対応することができます。今年10月からは医療事故調査制度が始まりますから、院内調査の迅速化や厳格化にも役立ちます。また1,000回に1回の重大な事故の根本原因を分析するだけでなく、事故が起きなかった他の999回の状況検討も有用なデータとなるでしょう。ただしDWHの構築では最初の段階で「何がしたいのか」「患者さんにどんな価値を提供していくのか」といった目的意識を明確にしておかないと、うまく利活用できないケースが多いことを肝に銘じておくべきです。

藤岡 ひたちなか総合病院の取り組みは、目的となる改善活動に対して「こうしたデータが必要だ」という実業の立場からの見識があり、そこに必要なデータを病院スタッフやシステム構築ベンダーと一緒に作り出していくというプロセスが見えてきます。医療機関のシステム構築やサービスを提供する側としても、そうした各医療機関のニーズをしっかりふまえ、価値あるデータを生み出すソリューションを提供していきたいと考えています。

-※2 Key Performance Indicators:重要業績評価指標

画像: 株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院 院長 永井 庸次 (URL: http://www.hitachi.co.jp/hospital/hitachinaka/ )

株式会社日立製作所 ひたちなか総合病院 院長 永井 庸次
(URL: http://www.hitachi.co.jp/hospital/hitachinaka/

個人情報のセキュリティを担保した利活用が必須に

永井 ビッグデータ利活用の観点でいえば、当院では年間1万人程の人間ドック健診情報とカルテなどの院内情報を統合したDWHを作っています。これが10年、20年と切れ目なく蓄積されていく価値は予想以上に大きいと考えています。

藤岡 先制医療(※3)やオーダーメイド医療につながる価値あるデータになりますね。個人のカルテや健康診断結果が統合されれば、患者さん一人ひとりの健康状態や病歴、投薬歴などが一覧できますし、クラウド経由で複数の医療機関や介護施設間の連携もできれば、生活指導や慢性疾患の治療も効率的に行えるはずです。その場合に重要なのがセンシティブな個人情報を守るためのセキュリティ技術です。日立では個人情報を匿名化してセキュアに管理・運用できる「匿名バンク」を提供しており、院外提供・連携や臨床研究向けなどのさまざまな医療サービスを安全に運用できる環境を用意しています。

永井 将来的に個人の電子カルテ情報は患者さん自身で見られる仕組みになっていきます。医療データの活用も個人の判断に委ねられるべきですから、個人データの共有をヘルスケア革新につなげていくには、強固なセキュリティ技術が必須となるでしょうね。

藤岡 医療データの有効な利活用は、医療の質向上や病院経営の効率化だけでなく、国民一人ひとりの健康増進や医療費の負担減にもつながります。医療現場の皆さまが必要とするデータをすばやく創出し、いつでもセキュアに利活用できるよう、これからも付加価値の高いソリューションを提供していきます。本日は貴重なご意見、ありがとうございました。

※3 患者の罹(り)病歴などより将来発病する可能性の高い疾患を予測し、発病予防の処置を行うこと

お問い合わせ先
(株)日立製作所 スマート情報システム統括本部
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/it/p-channel/iryo/form.jsp

■ 情報提供サイト
http://www.hitachi.co.jp/products/it/iryo/

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